9−5.開戦望まぬ米国世論
米政府首脳が如何に欧州戦参戦を訴えたくても米世論、国民は戦争を望んでいなかった。
というのも欧州戦が開始されたとは云え、米本土には実質的な損害も加えられていないので現実にドイツに対する敵意などが芽生えなかったのである。
遡ること9月4日には大西洋で米駆逐艦が独潜水艦の雷撃を受けたという事件が発生し、ルーズベルトがドイツが意図的に攻撃してきたと説明したが、上院海軍委員会が不審に思い、よくよく調査した結果、先に攻撃をしかけたのは米駆逐艦であったことが判明した。
さらに10月17日にも同様に米軍艦が独潜の攻撃を受け、ルーズベルトは「米国は攻撃された」と第一次大戦の時のように国内に反独熱が広まり参戦をと望んだのであるが、この事件もまた先に手を出したのが米艦ということが判明し、国民はルーズベルトは戦争を欲していると非難する結果となり、逆効果であった。
もうこの時期になると如何に日本を挑発して戦争を起こさせ、国民に反日感情を抱かせるかというのが重要問題となりつつあった。
当然米国がやむを得ず戦争に巻き込まれたという情況を演出せねばならないと考えたわけで、先に野村大使を虚像と断じたが自分には米国政府のやり方の方が虚像に満ちていると考える次第である。
戦後スチムソン陸軍長官は上院委員会にて
「日本を最初の発砲者たらしめるのは危険ではあったが、誰が侵略者であるかを明らかにし、米国民の完全な支持を得るには望ましかったのだ」
述べていることからもわかるように米政府は世論工作として日本を挑発し、最初の引き金を引かせようと躍起になったのである。
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