9−2.米国の東條内閣に対する評価


米国は近衛内閣自体たいして期待をしていなかった為、東條内閣成立を知ってショックを受けるわけでもなく実に冷静に「来るべきものが来たか」というように受け止めた。
米国政府は日本を事実上指導しているのは軍部であるから、その軍のトップが首脳になることで、これは戦争遂行内閣であると捉える見方があったからである。
しかし先の近衛首相とは違い、積極的かつ実効的な手腕を発揮するであろうと考え、この内閣が日米交渉を継続する意思を持っているのか、また戦争となったら南方へ進むのか、北方へ進むのか等慎重な討議が行われたようである。

米国政府内でもこの考えについて諸説があり、国務省極東部では首相としての東條は戦争より和平を望むであろうと考えたのに対し、大統領をはじめとし、軍事会議の委員らは戦争遂行内閣であると断言していた。
ただ両者とも
「これからどの程度開戦を引き延ばせるか」
という点のみに関心があったのであり、日米和解の模索をしていたわけではなかった。

10月18日にハミルトン極東部長は「東條内閣の評価」というメモランダムを大統領に提出しているが、これは米国側が事態を的確に分析していると思わせる一文である。
「東條将軍を首班とする新しい日本の内閣は、軍事的性格の強い内閣のように見える。新内閣はその政策の中で、軍備の充実、一層の国力の動員及び日本の国防地域での軍事力の展開と装備を強調するであろう。新内閣が政治的に直面する最も重要な問題は『支那事変』の解決と日本と大陸の関係である。経済的に最も重要な問題は、基礎物資、特に石油、非金属の確保とABCD諸国による経済上、通商上の規制措置を打破することである。軍事的に最も重要な問題は、ABCD諸国との戦争の脅威にプラスして、米ソの反日的な軍事協力関係の危機である。
新内閣は、日本の国際関係の解決を交渉によって図ることを拒否するとは思えないが、同時に、もし交渉による解決が進展せず不成功に終われば、軍事力の準備或いは展開の不足の故に軍事的解決の機会を失しないようにあらゆる可能な手段をとるであろう。新しい外務大臣である東郷氏は職業外交官であり・・(中略)・・氏の評価は熟練した、忍耐強い、有能な交渉者というものである。彼の任命によって日ソ及び日米間の陰悪な関係が改善されるわけではないが、日本政府は米国及びソ連と交渉による解決に向けて努力を続ける考えであることを示しているように思われる」

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