6−4.解読されていた日本外交暗号

日米交渉を扱う本に必ず出てくる「日本側の外交暗号は米国に解読されていた」という問題であるが、これは紛れもない事実である。
これは戦後になって発表されたことで、当時の人間には夢想だに出来なかったというのが真相である。
勿論戦時中に作戦暗号の解読が行われていると疑った提督や将軍が居たのは事実であるが、大多数は不可能であると考えていたのである。


当時日本外務省が使用していた暗号は「紫(パープル)暗号」と呼ばれ、当時としては画期的な機械暗号装置「九七式欧字印刷機」を用いて電文を送受信していた。
これは当時の暗号機、ドイツのエニグマやスウェーデンのハーゲリン、米国のシグマ或いは英国の暗号機のどれとも異なったものであった。
しかしこの暗号機の模造品を暗号の天才と呼ばれたフリードマンが作成し、日本側暗号の解読に成功したということである。
通常解読作業をするには数々の電文を拾って、そこから一致反復率という暗号を破る鍵を見つけ、少しづつ解読されていくわけであるが、件の人物はいきなり模造機を作ったことに疑問が生じるのである。
まさに天文学的確率で現実にはあり得ないはずのことが出来た裏には、どうも日本側よりこの暗号機の設計図なりメカニズムがスパイ行為により入手したものと多くの専門家は見ている。
詳細な入手経路は米国の国家機密につき明らかにされていない。


アメリカ側が「マジック」と呼称していたこのパープル暗号はこの頃から解読され始めており、日本側修正案に対する政府内の意見対立や、出先大公使館への電文に至るまで米側に筒抜けであった。
これにより日米交渉の主導権は完全に米国のものになったと言っても過言ではない。
特にこの後東条内閣が作成した甲・乙案を巡る交渉では完全に米国に翻弄される結果となるのである。

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